コラムColumn
マナーの「なぜ?」 小笠原流礼法の古文書の教えをベースに、現代に即した行動の在り方をお伝えいたします。
名刺交換の後、受け取った名刺は、テーブルの上に名刺入れを
置いてからその上に名刺を置くと丁寧でよいと聞いたことがあります。
それでよいですか。
~古文書より~
自己中心にならず、他者のこころを察して
大切に思うという意
受け取った名刺を名刺入れの上に置く方が少なくないように思います。丁寧に扱おうとする気持ちはわかるのですが、いつまでも相手のお名前が記されている名刺を出したままでいることは相手を軽んじていることにも繋がり好ましくありません。
たとえば、打ち合わせや会議が始まり、気づかないうちに先方の名刺を落としてしまう、あるいは書類に交じってしまうといたします。その光景を相手の方がご覧になったら、どのようにお思いになるでしょうか。常に相手のこころを察しながら行動することが大切です。
受け取った後は、感謝の念を込めて軽く押しいただき、お役職やお名前を拝見してから名刺入れに丁寧に入れます。
ただし、お会いする方の人数が多く、お名前が覚えられない場合はこのかぎりではありません。
そのときも、最後まで自分本位にならず、それぞれの名刺を丁寧に扱う気持ちを忘れないことが重要です。
手土産を紙袋に入れて渡すのは失礼、と聞いたことがあります。
なぜですか。
~教え歌より~
マナーを知っていても慎みがなく目につくことがあれば、
マナーをわきまえていないことと同様であるという意
紙袋は、なぜ必要なのでしょうか。まず、持参する人が品物を持ち運びしやすいからです。さらに、品物を汚さないためにも必要です。
よって、紙袋にはちりほこりがついていると考えられます。清浄感を重んじる日本人にとって、ちりほこりがついたままで手土産を差し上げることは失礼な行為なのです。
したがって、紙袋から品物を出してお渡しし、基本的に紙袋は持ち帰ります。相手の方が「紙袋をお預かりいたしましょうか」といってくださった場合、すぐにお願いすることは控えます。お願いする場合には「恐れ入ります」と、目に立たない慎みのこころを忘れずにお伝えします。
車で移動するさい、目上の方は後部座席の右側に座っていただくと
聞きますが、絶対にそうしなければなりませんか。
~古文書より~ 時・場所・状況に応じた自然なふるまいが大切であるという意
基本は、後部座席右側が上座、左側が下座です。ただし、左側通行の日本において車の乗り降りは左側から行うことが多いため、スカートや着物の方、あるいはお年を召している方に車の奥へと移動していただくことは避けたい場合もあります。そのようなときは、まず左側に座っていただき、自分は車の右側に回って、右側後方のドアを開けて乗車することが考えられます。あるいは、「誠に恐縮ですが、先に乗車いたしましょうか」などと伺ってから、左側より乗車して速やかに右側へ移動するほうが好ましい状況もあるでしょう。 最も大切なこころがけは、時・場所・状況にあわせて臨機応変で自然な行動をとることです。